漫画制作をアナログからクリスタに移行して感じた13の違い

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皆さん閲覧ありがとうございます。山本電卓と申します。

今回は子供の頃から漫画を描いてきた私が『原稿用紙に描くアナログ制作』から『パソコン上でCLIP STUDIO PAINTというソフトを使って描くデジタル制作』に移った時に感じたデジタル制作の利点と弱点を述べていきます。

今後デジタル制作に移行したいと思ってる方の参考になるよう、初心者の方、あまりパソコンに詳しくない方にもなるべく理解して頂けるように書いていきたいと思いますので宜しくお願いします( `・∀・´)ノ!

↓ちなみにですが私がCLIP STUDIO PAINTで描いた作品はこちらになりますのでよろしければどうぞ!

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参考記事:クリスタを購入する3つの方法と手順紹介!!

まずは漫画の描き方を軽く説明

 漫画の制作工程

漫画制作にはざっくり分けて5つの工程があります。

構想
構想

どんな主人公がどんな世界でどんな行動を起こす物語なのかを考える

ネーム
ネーム

コピー用紙やノートなどにコマ割りやキャラの配置、セリフなどをシャーペンでシャシャシャっと描く

下描き
下描き

ネームを基に原稿用紙にシャーペンもしくは鉛筆で本格的に絵を描いていく

ペン入れ
ペン入れ

下描きの上からインクを付けたペンで 本番の絵を描いていく

仕上げ
漫画仕上げ

下描きで描いた線を消しゴムで消したり塗りつぶしやトーン貼り作業、セリフの記入などを行い完成です!


こちらの工程はざっくり分けたものですので、作家さんによってはいきなり下描きから始める人もいればキャラの歴史までじっくり決めてから構想に入る人もいたりと個人差はありますね。

 漫画のアナログ制作、デジタル制作とは

漫画を本格的に描こうと思った人のほとんどはまず文房具屋さんに行って原稿用紙と付けペンとペン軸とインク(墨汁)を買って制作に入るかと思います。

これがいわゆる『アナログ制作』です。紙に直接描いていくタイプですね。

それに対してパソコンに描画ソフトを入れて、ペンタブレットもしくは液晶タブレットをパソコンにつなげて漫画を描いていくのが『デジタル制作』です。


漫画原稿は現物ではなく、パソコン内にデータとして存在しています。

そしてそこではレイヤーというものに絵を描いていきます。透明な紙のような認識で大丈夫です。そのレイヤーが何枚も重なって一枚の原稿が成り立っています。

レイヤー構成


どちらの方法で制作したとしても、しっかり読める形で読者に届けばなんの問題もありません。

しかしその作品が現物かデータかの違いは制作側の人間にとっては大きな違いになるのです。

私も漫画を本格的に描き始めた頃はアナログ制作でした。

ですが、インターネット上の投稿サイトに漫画を載せたいと思ったことがきっかけでデジタル制作に移行しました。

現在ではネームから仕上げまで全てパソコンで作業しています。

そこで使用しているソフトが、漫画制作に特化した描画ソフト

【CLIP STUDIO PAINT】です。

「クリップスタジオペイント」と読み、「クリスタ」の愛称で呼ばれています。


デザインの幅が広がるグラフィックソフト【CLIP STUDIO PAINT】



参考記事:クリスタを購入する3つの方法と手順紹介!!

参考記事:クリスタとは何?初歩的な疑問にお答えします!!


次の項目から、CLIP STUDIO PAINTで制作して感じた利点、弱点を述べていきます。

MEMO

CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオ ペイント)とはセルシス社のパソコン(もしくはタブレット)の描画ソフトの1つです。CLIP STUDIOの中にも描画・アニメーション制作ソフトの「PAINT」、CLIP TUDIO PAINT内で使う3D素材・モデルを制作するソフト「MODELER」の2種類があり、今回紹介するのは「PAINT」の方です。

CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)制作の利点

  修正が段違いに楽!!

なんといってもコレです!コレがかなり大きいです!!

漫画を描いているとどうしても失敗したり描いた絵の構図を変えたいと思ったりすることがあります。より良い作品にするため、描き手は修正を繰り返します。そのため修正が楽にできるというのは大きなポイントです。

クリスタ楽々修正ポイント「消しゴム」

アナログ制作をしている時に起こる問題が修正跡の汚れ。

下描き作業時には消しゴムの跡やシワ、ペン入れ作業時には修正液のにじみや盛り上がり。

頑張って描いていても原稿が汚れてくると描き手のテンションも下がります。また、修正した箇所の上から改めて描くとなると描きにくかったり線がゆがんだりさらに汚れが広がってしまうなんてことも少なくありません。

アナログの汚れ・しわ・にじみ・盛り上がり


この汚れがクリスタで制作すると全く気にする必要がりません!

クリスタ(デジタル)制作での線は全てデータです。

ですから線を消そうと思えば簡単に消すことができます。そして消した原稿は真っ新な原稿と同じ状態ですので修正跡など気にせず改めて絵を描いていくことができます。また、修正液が乾くまで待つ必要もありません。

クリスタの消しゴムツール


さらにクリスタには上記で述べたレイヤーの1つにベクターレイヤーというものがあります。

このベクターレイヤーに描いた線は専用の消しゴムを使うと…

クリスタの消しゴム―ル(ベクター用設定)
クリスタ「ベクター消去(交点まで)」


このように線の交点までポンッと消すことも可能で修正作業自体も簡単に行うことができます。

これぞクリスタの特徴!ベクターレイヤーが便利すぎる!!

クリスタ楽々修正ポイント「移動」

漫画を描いているとこういうことも起こります。

「あ!このキャラの位置もう少し左の方がよかったな…!」

漫画位置変更


アナログ制作ですとこれはもう絵を消して描き直さなければいけません。下描きだと消しゴムをかけるだけで済みますが、ペン入れ後だと絶望的です。最悪用紙ごと描き直しとなります。

これがクリスタですと…

クリスタで絵を移動する


このように簡単に絵の移動ができます!

クリスタ楽々修正ポイント拡大・縮小」「回転」「反転」

漫画を描いているとこいうことも起こります。

「あっ!身体に対して顔が大きくなってしまった…!」

頭大きい

そんな時も…

クリスタで絵のサイズを変更する


このように後から調整ができます!

さらには…

クリスタで絵を傾ける


こんなことも可能!描き直さなくていいんです!

アナログ制作だとなるべくミスをしないように慎重に線を描いていきますが、クリスタ(デジタル)制作なら修正作業が楽になるなら思いっ切り線を走らせることができ、絵にも勢いが生まれます◎

※縮小した顔と身体の境目は当然ズレがありますのでそこだけは手作業で修正して下さいね。

クリスタ楽々修正ポイントレイヤー」

例えば人物Aをレイヤー1に、人物Bをレイヤー2に描くとします

そして人物Aだけを修正したい場合、レイヤー1を選択して作業を行えば人物Bはその修正の影響を受けません
上記で「修正箇所を選択してから拡大・縮小」などと説明しましたが、レイヤーが別なら「選択」という作業も不要になります。

クリスタでレイヤー分けで編集


また、下描きとペン入れでレイヤーを分けることで下描きだけをペン入れ後非表示にすれば消しゴムで下描きを消す作業もなくなります。消しゴムかけの時に原稿がグシャッとなる悲劇も防げますね。

クリスタ:下描き非表示


ただし、レイヤーが増えすぎると作業も大変になるので必要最小限の数で制作をしましょう。

クリスタ楽々修正ポイント取り消し」

こちらはクリスタ(デジタル)制作ならではの機能ですね。

クリスタ上での操作を1つ前のものに戻すことができます
ボタン1つでできるので失敗を恐れずどんどん作業を進めることができますよ!

クリスタ「取り消し」

インクが 永遠に出続ける!

インク


アナログ制作ではペン先にインクを付けで描画し、インクがなくなったらまた付け足し…その繰り返しです。しかしクリスタ(デジタル)制作ならそんなことをする必要もなく永遠に描き続けることができ、描画に集中できます!

アナログ制作で起こり得る「いいところでインクが切れて線がかすれた!」「ペン先にインクが固まったり油汚れが付いたりで手入れしないと綺麗に線が引けない!」「インクをぶちまけて何時間もかけて制作した原稿が台無しに!!!!!」

なんてこともありません◎手も汚れません◎

アナログ漫画のかすれ・手入れ・インクこぼし

 漫画制作の手助けとなるクリスタのツールで作業を効率化!

アナログ制作の場合、ペンの他にもいろんな道具を使います。定規や筆、カラス口、コンパスなどなど…。クリスタ(デジタル)でそれらの道具にあたるのが「ツール」です。漫画制作にとても役に立つものばかりなので紹介していきます。

画材

塗りつぶしツール

ワンタッチするだけで選択している色を線で囲まれた部分全てに塗るツールです。カラーでももちろん使えますが漫画においてはベタ塗り(黒く塗りつぶす)ツールとして使えます。ベタ塗りは範囲も大きいですしアナログ制作では線の近くでははみ出さないように注意を払って塗らなければいけなく地味に大変です。

しかしクリスタ(デジタル)制作では塗りつぶしツールで一瞬で楽に塗りつぶしが行えます!

クリスタの塗りつぶしツール


また、塗りつぶしツールはスクリーントーンを貼る時にも使えます!
アナログ制作だとはみ出すだけなら切り取ってしまえばいいですが切りすぎてしまうとトーンの角度がある以上付け足しは難しいです。しかも使えば当然減っていきますので手持ちのスクリーントーンの中から残っている部分をいかに無駄にならないように切り取るかも考えなければいけません。

しかしクリスタ(デジタル)制作ならワンタッチでポン!です!

クリスタ:トーンレイヤー

クリスタで漫画にトーンを貼る方法!【トーンレイヤー設定】

図形・定規ツール

アナログ制作で定規を使う場合は定規がずれないようにしっかり押さえなければいけませんし、線を引いてる途中でインクが切れてしまうこともあります。そんな心配も定規ツールを使えばパッと解決します。細かい使い方まで書くと長くなってしまうのでざっとできることを抜粋して紹介していきます!


●図形ツール

「直線」の図形ツールを使えば好きな長さのキレイな直線を引くことができますし、「曲線」の図形ツールを使えば線の始点、終点を決めてその間の線を好きな曲げ方にして描画することができます。

「長方形」「楕円」「多角形」の図形ツールではそれぞれの図形を好きな大きさで簡単に描画できます。

クリスタで作成できる図形例


●定規ツール

定規ツールとはペンなどの描画ツールの動きを固定させることができる「定規」をキャンバス上に設置するツールです。
こちらにも「直線」「曲線」「図形」などの定規があります。

クリスタの定規ツール


さらに定規ツールには「平行線」「放射線」「同心円」「パース」などの定規があり、それぞれ漫画表現に必要な描写をするのにとても役に立ちます。

クリスタの定規例


特に「パース定規」は建物を描く際にとても役に立ち、消失点が原稿用紙からかなり離れた位置にある場合でも楽に描画ができます

クリスタのパース定規(キャンバス外に消失点)
MEMO

図形ツール・定規ツールで描いた線もベクターレイヤー上に描いたものなどの条件はありますが、後から大きさや太さ・位置・角度も調整することが可能です。

クリスタ定規ツールの種類と使い方・効果を紹介します!!

自動選択ツール・選択範囲ツール

顔のパーツや服の柄など、ある一定の面積の中でのみ線を描きたいということもあります。

アナログ制作の場合は気を付けて描くか描きたくない所の上に紙を置くかくらいしか対処法がないのですが、自動選択ツールや選択範囲ツールは「選択範囲」を作成し、その範囲のみ描写可能にすることができるツールです。
これを使えばはみ出しなどを気にすることなく描画ができます。

クリスタの選択範囲を使って色塗り

クリスタ4つの「選択範囲」作成方法とその機能!!

画面表示を変えて解りやすく作業!

ここにキャラクターの顔を正面に描いた絵があります。

下描き(顔)


人間の目というのは結構いい加減なもので、上手く描けてると自分で感じていても反転させてみるとなんだか違和感を感じます。

下描きを反転

下描きの左右のズレ


このように反転すると意外とバランスが崩れていることが分かることがあります。これがアナログ制作の場合ですと紙を裏向けて部屋の電灯を当てる、もしくはトレース台を使うなどして裏面から絵を見てバランスを確認し、改めて表面で描き直ししなければいけません。

トレース台
↑ライトによって裏表両方の線を透かして見ることができる。
トレース台で絵を反転して確認


これがクリスタなどのデジタル制作ですとボタン一つで左右反転などの画面表示の変更ができ、簡単にバランスの確認ができます。

さらに、利き手などの関係で「左向きの顔しか描けない」といった人も反転表示を利用して右向きの顔も描けます。

クリスタの左右反転表示


また、この画面表示は角度も変えることもできるので自分がやりやすい表示で作業できます◎

クリスタでキャンバスの角度を変える

コマ割りが簡単!

今までは絵を描く上での利点を述べてきましたがこちらはまさに「漫画制作」での利点です。アナログ制作でコマ割りをする場合は定規を使います。しかし大きいコマだと線も長くなり、均一な太さの線を真っ直ぐ綺麗に引くというのはなかなか神経を使う作業になります。絵を描く前に疲れてしまいますね。

クリスタならそれが楽にできてしまいます!はみ出しも線のガタガタもインクのにじみも定規のインク汚れも気にしなくていいんです!


まずは以下のどちらかの方法で基準枠に大きなコマを一つ作ります。

クリスタ「コマ枠フォルダー」

クリスタ:新規コマ枠フォルダー

クリスタ:コマ枠作成


あとはそれをコマ枠カットツールで分けるだけです!
あっという間に終わらせることはできます◎

クリスタのコマ枠カットツール


また、変形コマやコマ同士をつなげることも可能です◎

クリスタのいろいろなコマ枠


コマ枠作成の詳しい説明は以下の記事を参考にして下さい◎

クリスタの漫画コマ枠作成&コマ割り方法!2ステップ+αで簡単!!

画材の買い足し不要!

夜中に作業中、「あっ、原稿用紙がなくなった…!」「スクリーントーンが足りない!」「ペン先が壊れた!」なんてことがあったら翌日画材屋さんが開くまで作業が中断してしまいます。せっかく時間できたのに…いい感じで集中できてたのに…。悲しいですね。

クリスタ(デジタル)制作ですと画材は全てソフトの中にあるので使い放題です。原稿用紙もインクもあの高いスクリーントーンもガンガン使えます。

ペンだけでもGペン、カブラペン、丸ペンなどよく聞くペン先は標準で入ってますし筆も標準で用意されている分で充分なほど種類があります。

クリスタのペンツール


またスクリーントーンは「線数」「濃度」「角度」を自分で変更できますのでこれだけでもかなりの画材代が浮くことになります!画材屋に行って「いつものトーンが在庫切れ…」なんてこともなくなります。

クリスタ:簡易トーン設定

クリスタで漫画にトーンを貼る方法!【トーンレイヤー設定】


また、特殊なスクリーントーンやツールなどは必要に応じてCLIP STUDIO ASSETSというサービスでダウンロード・追加もできます。(有償・無償あり)

【クリスタ】無料素材でもこんなに便利!ダウンロード方法と使い方を紹介します!

 下描きをカラーにして解りやすくできる!

アナログ制作での下描きは鉛筆もしくはシャーペンで描きます。しかしそれだとグレー単色で、一コマにたくさん描き込みをしていくとどれがどの線だったか混乱してしまいます。

下描き(混雑)


そこで下描きの段階からクリスタ(デジタル)制作を行うと、キャラクター別にレイヤーや色を分けたり、

クリスタ:下描き


ペン入れの際には下描きのレイヤーの不透明度を下げることで作業がやりやすくなります◎

※間違って下描きレイヤーにペン入れしないように注意!

クリスタ:ペン入れ


また、ペン入れの際に不要な下描きレイヤーを非表示にして作業することができとても快適です。修正も楽ですしね◎

クリスタ:下描き(レイヤー分け)


クリスタではレイヤーを「下描きレイヤー」として設定することができます。別に絶対設定しなくてはいけないものでもないのですがこの下描きレイヤー、塗りつぶしツールや選択ツールに干渉しないという利点があり、とても便利なのです!なので設定することをお勧めします◎

クリスタ:下描きレイヤー
クリスタ:塗りつぶし(下描きレイヤー)
MEMO

カラー漫画以外では原稿用紙を新規で出す際、カラーモードは「モノクロ(白黒)」を選択します。そうすると下描き用レイヤーを作成してもそのままでは黒色と白色、そして下描き用で選択した色(単色)しか描画できません。複数の色を使いたい時は下描きレイヤー作成後「レイヤープロパティ」で「モノクロ」から「カラー」に選択し直しましょう。

クリスタで絵を描く!下描きレイヤーを使えば効率が上がる!!


ペイントツールのスタンダード【CLIP STUDIO PAINT PRO】


マンガ制作ソフトの最高峰【CLIP STUDIO PAINT EX】


参考記事:クリスタを購入する3つの方法と手順紹介!!

デジタル(クリスタ)制作の弱点

今までアナログ制作は大変だ!という話をしてきましたが、デジタル(クリスタ)制作にもやはり弱点はあります。

紙に描く感覚がないので違和感がある

パソコン上で描画するので当然ですね。私自身はかなり長い年月をアナログ制作でやってきましたがそこまで違和感はありませんでした。しかし私の周りではこういった話をたまに聞きます。自分の指先から直接紙に伝える感覚はどうしてもデジタルで再現するは難しいです。紙の方が上手く描けるという人もいるでしょう。ここは好みになりますね。

慣れる必要がある(ペンタブレットの場合)

ペンタブレットは液晶タブレットに比べて安価なのでデジタル制作に移行する人はまずペンタブレットから始める人が多いかと思います。

しかし、液晶タブレットは画面に直接描画できるので絵を描く感覚はそこまで違和感がないはずですが、ペンタブレットの場合ですと描画する場所と線が表示される画面は離れているのでどのくらいペンを動かせばどのくらいの線が引けるのかは実際やってみないと分からないところがあります。ここを乗り越えられるかも一つのポイントになりますね。

クリスタとペンタブレット


ただ、乗り越えた先にはとても便利な機能たちが待っています!

MEMO

ペンタブレットや液晶タブレットを扱っている家電量販店ではお試し用として店内に置いてある場合が多いのでそこでどんな感じか体験してみるのがいいいでよう。これくらいなら大丈夫そうと思えば購入を検討してみて下さい。

融通が利かない時がある…!

アナログ制作の場合、手間はかなりかかりますがその代わり自分のやりたいようにできます。
とあるプロの漫画家さんが絵に迫力を出すために割り箸を使って描いているのを拝見したことがあります。こういうことができるのはアナログ制作の強みですね。逆にデジタル制作の場合はソフト内にあるツールしか使用できません。(そのツールがとても便利なわけですが)

設定に関しても、自分の好みに調整ができるのは利点ですが、全ての作業に適用されてしまいます。

例えばペンツールで入り抜きを設定しますと、そのペンで描いた線は全て設定した入り抜きが表現されます。
ピタッと線の端を丸く表現したくてもクリスタの機能で自動的に先が尖ってしまうのです

クリスタ:入り抜き
クリスタ:入り抜き設定

教えてクリスタ!ペンの入り抜き設定項目の意味が知りたい!!


もちろん筆圧検知機能のあるタブレットを使用すれば入り抜き設定をOFFにしても線の太さや入り抜き表現を自分の筆圧で調整することはできますが。

描画の強さによる線の太さ


逆にいえば、アナログ制作ではインクの量やペン先の状態などで自分の意図しない所で線が太くなったり細くなったりすることもありますがデジタル制作では設定した太さをずっと描いてくれるという利点にもなりますね。

MEMO

ちなみにペンツールなどは複製することができ、名前も変更できるので抜きの強いペン弱いペンなどオリジナル設定のペンを用意しておき、用途に応じて切り替えて作業するということもできます。


また、ペンでいえばペン軸を改造して自分の描きやすいペン軸を作る人もいますね。これもデジタルではできません。機械ですからね…。布を巻いて太くするくらいはできそうですが…。

ペン軸改造例


あと、先述のベクターレイヤーでの交点まで線を消す消しゴムツールも、大抵はキレイに消してくれますが稀にに少し残ってしまうこともあります。
原因は解りませんがソフト内で何かしらの理由があるのでしょう。こうなった場合は制御点ツールなどで調整する必要がありますね。交点まで消すというのがかなり便利なのでこれくらいは目をつぶってもいいかなとも思いますが。

クリスタベクター線の消し残り

クリスタは便利!ベクター制御点ツールでこんなことができる!!

ペイントソフトによって未対応の機能もある

ペイントソフトによっては自分のやりたい表現にソフトの機能が対応していない場合もあります。

クリスタの公式サイトには「こういう機能を追加してほしい」という利用者からの要望もたくさん書かれています。

要望を受けてアップデートの際に新機能として追加されることもありますし今後も今できないことができるようになる可能性も0ではありません。

ですが、今作りたくても機能的にできないものを新機能として追加されるまで待つというわけにもいきませんよね。そんな時は自力でアナログ制作のように今できる機能内でやるしかありません。

そもそも機能が便利であっても、必ず使わなければならないわけではありません。コマ枠だって自分でペンツールを使って描いたっていいわけです。
「色々できるのにこれはできないなんて不便だ!」と考えるのではなく、大変な漫画制作の中で「この作業の時はこの機能が使えるから便利だなぁ」と考えれば気持ちも楽になるかと思います。

あくまで機能は「あれば便利なもの」。機能にとらわれ過ぎないようにしましょう◎

突然の不具合が起こる可能性がある

この記事を読んでくださっているということはパソコンもしくはタブレット・スマートフォンをお持ちなのかと思います。だとすればほとんどの人が経験してるのが突然の機械の不具合です。「昨日まで普通に使えていたのに急に動かなくなった」「1秒前まで使っていたのに急に固まった」「電源入れたらデータが消えていた」こういったことで辛い思いをした人も多いはずです。

デジタル制作はパソコンを使用するのでこういった不具合の危険もあるのです。

私が経験したことでいえば、急にペンの設定が適用されなくなったことですね。細く、入り抜きも設定しているのに太い入り抜きのない線しか描けなくなりました。

まぁこちらはパソコンを再起動すれば直ったので本当に軽い不具合のようでした。ですが作業は中断されるしできれば遭遇したくないですね。

データ保存に対するクリスタの機能

不具合で一番気を付けなければいけないのがデータの保存ですね。1時間保存せずに作業に没頭してたら急にソフトが強制終了した…!?ってことになると、この1時間の作業が無駄に…?なんて考えるだけでゾッとします。

しかしクリスタにはそんなトラブルを想定した機能があります

クリスタの環境設定で「キャンバスの復元を有効にする」にチェックを入れると「復元情報の保存間隔」に入力されている時間ごとに作業中のデータが一時的に自動保存されます。

クリスタの環境設定「キャンバスの復元を有効にする」


もしソフトが強制終了した場合も、ソフトを再び起動すれば最後に保存された時のデータが自動で復元されます。ここで改めて保存すれば最悪の状態は防げるということです。

ちなみに保存前に手動で間違えて終了ボタンを押してしまっても「保存しますか?」と聞いてくれるのでご安心を◎

注意

これはCLIP STUDIO PAINTが強制終了した場合のみ有効で、パソコンの電源が落ちてしまった場合は手動で保存した時のデータしか残りまん。また、自動復元したデータを保存しないまま自分でCLIP STUDIO PAINTを終了したり、パソコンの電源を切った場合も復元はできません。


他にもクリスタにはデータ保存に対しての機能があります。それが自動バックアップです。クリスタ上で保存を行うと自分で保存したフォルダとは別にパソコン内のCLIP STUDIOのフォルダにバックアップとして自動で保存されます。

自分で任意のフォルダに保存したデータがなにかしらの原因で壊れてしまった時でも、そこからデータを持ってくることができます。

クリスタ:バックアップ


ちなみに

DocumentBackup:上書き保存時のバックアップデータ

InitialBackup:ファイルを開いて一度目の上書き保存時のバックアップデータ

RecoveryBackup:強制終了時の一時バックアップデータ

となっています。

MEMO

CLIP STUDIOのフォルダはCLIP STUDIO PAINTをインストールした段階で自動的にパソコン内に作成されます。


また、このバックアップは複数段階の保存データが用意されています。
どういうことかというと、バックアップデータが作られる時は毎回新しいバックアップデータが作成され、「最新のバックアップデータ」「1つ前のバックアップデータ」「2つ前のバックアップデータ」と複数のバックアップデータが存在してる形になるということです。

例えば上書き保存したデータより前のデータに戻したいと思ったらこのバックアップから最新のバックアップデータより前のバックアップデータを持ってくればそのデータを復元することができるのです。

注意

ただしバックアップデータも20個を超えると古いデータから順に削除されていくようです。また、保存のたびに自動でバックアップデータが作成されるとありますが、上書き保存の間隔が短い時はバックアップデータが作成されない場合もあるようで、一番古いバックアップデータも必ず20個前に保存したデータであるわけではないということを頭に入れておいて下さい。

安心・安全制作!クリスタ3つのバックアップ機能!!

自分でもバックアップを

いくらクリスタに自動バックアップ機能があるといっても、パソコン内のデータが消えてしまったりパソコン自体が動かなくなってしまっては復元のしようがありません。必ずDVDやUSBなどを買う、もしくはオンラインストレージ(クラウド)を利用して定期的に自分でデータをコピー・保存してバックアップを行ってください。

ちなみに保存できるデータは完成原稿の画像データ(結合データ)だけではなく、CLIP STUDIO PAINT制作データ(レイヤーが複数ある状態)も保存できます。また、CLIP STUDIOのフォルダにはツールなどの「設定データ」もありますので原稿データだけでなくこちらもバックアップをしておくともしもの時に安心です。こちらはパソコンを買い替えた時にも使えます。

クリスタはクラウドで複数デバイスとデータ共有が可能です!!

買い替え安心!クリスタ設定は新デバイスに引き継ぎ可能です!!

こういった機械のトラブルは確率は低くとも誰にでも起こり得ることです。

こんな話を聞くと特にパソコンが苦手な人はデジタル制作の移行に消極的になってしまうかもしれませんが、しっかりと対策をとっておけば最悪の事態は防ぐことができます。

自分の中でこうすれば最低限の安心は確保できるなと思ったときはデジタル制作の移行も考えてみて下さい◎

最後に

今回はアナログ制作からクリスタ制作に移行した時の個人的な感想を述べてきましたが最後に言いたいことがあります。

それは…

漫画は自由!!

ということ。

作業をそれぞれで振り分けることもできます。

例えば下描きまではアナログでやってそれをスキャンしてパソコンに取り込んでペン入れをデジタルでやるという方法もあるでしょう。

ペン入れまでアナログでやってベタ塗りやスクリーントーン貼りをデジタルでやってもいいですね。

あるいは逆に下描きもしくはペン入れまでデジタルでやって残りはアナログでという方法もアリなのではないかと。

漫画制作アナログ/デジタル


漫画の描き方に正解はありません。そしてそれは表現方法においても同じで、仮にコマ枠がないものが作品として出てきたとしても、キャラクターが魅力的に活動していたらそれは漫画と呼んでいいと私自身は考えています。

アナログでもデジタルでも、どんな表現方法でも、自分が楽しく漫画を描けて、それが誰かに届き、何かを与えることができればそれが一番素敵なことなのです。

この記事を読んで少しでもデジタル制作もしくはクリスタの良さを感じてもらえれば、決してお安いものではないですがちょっと試してみてはいかがでしょうか◎

アルル・カビス

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